新生児マス・スクリーニング検査の対象疾患の拡大について
今回は、新生児スクリーニング検査の対象疾患を増やす試みについてお話しします。
まず、対象疾患を増やすためには、様々な要素を考慮する必要があります。治療法や対処法があることはもちろん大切ですが、現実的な費用で検査ができるか、検査後の診療体制が十分かどうかも重要です。そして、どれくらい信頼性のある検査が実施できるかも大きな課題です。
ここで、検査の信頼性について、少し例え話をしてみます。たとえば、学校に遅刻が多いA君がいるとしましょう。その学校では、登校時間が8時30分、授業開始が8時40分と決まっています。A君はほとんど毎日8時35分に登校しています。A君は授業には間に合っているので、出席の確認を授業開始直前に変更してほしいと言います。
一方で、B君もいます。B君は通常8時30分前に登校しますが、時々8時40分を少し過ぎることがあります。B君は「遅刻は遅刻だけれど、基準が8時40分になれば、いつも間に合わないA君は遅刻がなくなり、授業にほぼ間に合っている僕だけが遅刻扱いになるのはおかしい」と言います。
この例からも分かるように、遅刻(病気の発見)の基準をどこに置くかによって、その発見率が変わってきます。基準値を変更すると、本当は病気になっている人(遅刻している人)を見逃してしまうかもしれません。しかし、授業をきちんと受けるという観点からは、A君は遅刻していないかもしれません。
また、基準に使っている時計が古いタイプのものであれば、現在では携帯電話の時計を基準にする方が公平かもしれません。遅刻の基準は「校舎にいればいい」のか「席に着席していなければならない」のか、といった点でも変わるでしょう。
このように、新生児マス・スクリーニング検査の精度を決めるには、様々な要因が関係しています。検査の道具や測定方法、評価方法など、多くの要素が関わっていることを、少しでもご理解いただければ幸いです。